あなたの会社が中期計画を達成できない理由

どこの会社でも,あるいはちっちゃな部門でも,およそ業績目標値ってのは持っていると思います。今期の目標値以外にも「第n期中期計画」みたいな感じで,3〜4年ぐらいのスパンの計画もあるんじゃないかと思います。

これって皆さんのとこではどのように扱われているのでしょうか。


本筋に入る前に,ちょっと事前の整理ですが,皆さんは「見積もり」という言葉,特にプロジェクトにおける期間や費用の「見積もり」をどう捉えているでしょうか。

見積もる,というのは,ワタシのMacに入っている国語辞書によりますと


み‐つも•る【見積(も)る】
〘動ラ五(四)〙
1 目分量や心づもりではかっておおよその見当をつける。目算する。「入場者数を--•る」
2 工事や製品などの、原価•日数•経費などを前もって計算して出す。「経費を--•る」「工事を--•る」

と書いてあります。

しかし,2の「原価•日数•経費などを前もって計算して出す」というのは不正確です(「出す」って何だろう,というのは置いても)。もし本当に原価・日数・経費などが計算できるのであれば,それは「見積もる」というよりは「精算する」です。

見積もりは「原価・日数・経費などが,どれぐらいまでなら自分が耐えられ,かつ顧客も耐えられるか」について,おおよその見当をつけることです。原価・日数・経費そのものについて見当をつけて「見積書」を出しているわけではありません。

「見積書」は「計算書」とは異なり,報告をしているのではなく,「約束」をしているのです。約束なので,仕方ないと認めてくれるような合理的な理由が発生しない限り,見積書の内容は守るのが原則です(IT業界では,その「合理的」の扱いで色々もめるわけです。かくいうワタシも,叩かれるとホコリが出てしまう身ですが...)。

この辺りの話は「ソフトウェア見積り 人月の暗黙知を解き明かす」が詳しいので,まだ読んでない方はぜひ読んでみてください。

さて,プロジェクトの見積もりです。

ワタシのようなソフトウェア系の人は経験的によく知っているし,前述の本にも書いてある話ですが,「プログラマに見積もりを依頼すると(なぜか)最良値に近い値を出してしまう」という法則があります。

特に細かく分けて見積もりをすると,すべてが最良値で出てきてしまい,それらを積み上げると大変「良い」,つまり「安くて早くて品質の良い」見積もりになってしまいます。

しかし,その見積もりはすべてをぬかりなく,かつ運良く進められた場合にのみ実行可能な値です。ちょっとした前提の狂いやトラブルで大きく外れてしまうことがあります。

そうした「最良値の積み上げ」を防ぐため,プロジェクトマネージメントの本や講習では「3点見積もり」が薦められています。

つまり,細分化した個々の範囲を,最良値・最尤値(最ももっともらしい値)・最悪値の3点で見積もり,トータルとしては最悪どれぐらいか,最良でどれぐらいか,最もあり得そうな値はどれぐらいか,を計算します。そして,最良と最悪の間を小さくしていくためにどんな情報や対策が必要かを検討し,できることを順次やっていきます。

この3点から1点の値を出す方法については,いろいろな考え方・やり方があると思います。前述の本などを参考にしてみてください。

と,ここまでが見積もりの話です。


そしていよいよ本題の中期計画です。

皆さんのところでは中期計画は「目標」でしょうか「約束」でしょうか。

ワタシは,もし中期計画が守られるべきものであれば,やはり「約束」として考えるべきだと思います。
そして「見積もり」と同じく,充分推測可能な範囲にまで細分化して,3点で値を見積もるべきではないでしょうか。下のレベルから上のレベルに「計画値」として1点あげる場合も原則は3点出し,上のレベルでもやはり3点で集計した上で1点に絞るべきではないでしょうか。

例えば,不確実性の高い新規事業と,ある程度安定している過去からの継続事業では,同じ1点だけ上がってきた数値だと言っても,信頼性が異なります。これらを1点で積み上げていくと,いくら個別の事業レベルでは3点見積もりをしているとは言え,全事業トータルとして信頼性の高い「約束」ができるとは言えないと思います。

エイヤ!で出した突拍子もない数値を「元気がいい数字だな,おい」みたいな呑気なことを言っているようだと,おそらくその数値は守られないんじゃないかと思います。

裏付けのない「元気がいい数字がほめられる」風潮は,場合によっては「計画は守らなくてもOK」「深く考えずに数字を出してもOK」という考えにつながったり,「どうせ結果は同じなんだから,ほめられた方が得」というなんだか訳の分からない理屈につながったりするのではないかという気がしています。

「元気のない,小さくまとまった数字のほうが良い」と言うつもりは全くありませんが,どの数字がある程度読めてて,どの数字のチャレンジ度が高いのかは,ちゃんと把握しておく必要があると思います。

ちなみに中期計画が「目標」となってしまっていて,「約束」と言えるのは「予算」だけというようなところは,目標の実現に向かって「計画」を立てる必要があると思います(中期計画なんだから「計画」でないと困ります)。そして計画を実行しつつ見直しつつ,目標を実現していくべきと思います。

計画と言いながら,施策が「〜の検討」とか「〜の強化」程度の,あまり具体性のない「掛け声」だけで埋まっている中期計画だったりすると,やっぱり「目標」のままで終わってしまうのではないでしょうか。
必要な費用・期間・体制・資源と得られる効果を(誤差は大きくても)見積もり,それぞれの信頼度を3点で評価していく,そして,常に信頼度を上げる努力をして,値を見直していく,ということが重要な気がします。

などと偉そうに書いちゃいましたが,言うほど簡単にはできないのも確かで,会社の人にこの文章を読まれたら「お前はできとらんやないか」ってツッコミで大変なことになります(書かなきゃいいんですが)。