アンドロイドの脳

最近読んだ本。

アンドロイドの脳 人工知能ロボット"ルーシー"を誕生させるまでの簡単な20のトラップ

めちゃくちゃ感動(というか興奮?)した。
この手の一般向け科学読み物では「ホーキング、宇宙を語る?ビッグバンからブラックホールまで」以来に興奮した(あいだ空き過ぎ)。

簡単に内容を紹介すると,「ルーシー」っていうロボットを作る過程で,脳の動き方・働き方について理解を深め,(あわよくば?)ルーシーに知性を持たせましょう,というプロジェクトの紹介というか説明。

なんていうか,目から鱗やらなんやらが落ちまくり。まあ,ワタシは影響されやすいほうなんでアレだけど。

これ読むと,例えば人間の脳からソフトウェア情報を取り出して保存しておくことで,ハードウェア(肉体)が朽ちてもロボット上に人格を再現でき,それで今までと同じく「生きている」ことになる,という(例えば,ルーディ・ラッカーの「ソフトウェア」とかのSFにあるような)のは,相当無理があるよなぁと思わざるを得ない。
人間の脳って,ソフトウェアだけ取り出せるような代物ではないのね。

この本の冒頭で,著者がコンピュータがあれば仮想環境を作り出せる,って言っているわりに,あくまでハードウェアにこだわって(仮想ロボットではなく)リアルロボットを作ろうとしているのも,読み進めるとなんとなく分かる気がする(完全に納得はしてないけど)。

知性を持った動物になるためには,周りの物体と相互作用を持たないと。周りからインプットをもらって,アクションをとってアウトプットを出し,さらにそれに対するフィードバックを得ないと。

さらに,人が,人としての知性を持った人となるためには,人と相互作用を持たないとダメなんだね。
うちのばーちゃんは,「よく成長したなぁ」という意味で「ひとなったなぁ」という表現を使ってたけど,これはどう考えても「人成る」でないかと思う。人は他人との相互作用でもって動物から人に成っていく。人と相互作用を持たないと人に成らんのね。オオカミ少年。

漠然と,今の世の中,知識はオンラインで無尽蔵に手に入るんだから,人並みの知性をもった人工生命をコンピュータ内に生み出すことは可能なんじゃないかと思ってたりしてた。けどこの本を読んで改めて,人間が赤ん坊にかまう時間ぐらいは人間がかまってやらないと,人並みの知性なんか身に付かないよなと思ったり(まして,赤ん坊の方がその辺のスーパーコンピュータより学習能力は高いので,もっとかまってやらないとダメだよな,とか)。

たぶん,詳細な実装のアイデアとしては,なんらかの配列の組み合わせを継続的に変化させていく,そしてそれらを相互作用させる,というあたりがおそらくベストに近いし,また現実にもかなり近いと思う。
ルーディ・ラッカーの人工生命研究室 on Windows」(再びラッカーで恐縮)に登場するBopperのような,遺伝的アルゴリズム/遺伝的プログラミング(GA/GP)で進化するってのもそうかも知れないし,進化はしなくても成長すれば良いような気もする。

ただ,それぞれにどういう機能を持たせるか,どんな抽象度・粒度で組み合わせるか,どう組み合わせるか,とかっていうあたりの,より上位の部分が,ある程度目指すところに近くないと,それこそ「アメーバを進化させて人間にする」みたいな,途方もない時間が必要になってしまうんだろうと思う。

また,有機生物が化学反応の枠組みを超えられないのと同様に,ソフトウェアも,プログラマが基本要素として規定した枠組みは超えられない。ということは,ある程度,知性を持つために必要な枠というのを意識して初期段階で設計しておかなければならない。
だから,詳細な実装から進んで行く人も必要だし,上位の,より人間の脳の全体機能から見ていく人も必要……って,なんか当然と言えば当然か。

ともかく,個人的には今まで読んだSFの意味とかを考え直させてくれるきっかけが得られて,とてもよかった。

ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアは「最後の午後に」って短編(「愛はさだめ、さだめは死」収録)の中で「人間は時間をたくわえる生き物なんだよ」とかって主人公に言わせてる。今までもこれで納得してたけど,所詮は「文明の蓄積がある」っていう程度の認識で,なんてゆうか,例えば猿の惑星と繋げて考えたことはなかった。地球上に3歳以下の子供しか残らないという状況が発生したら,仮に運良く彼らが成長できたとしても,猿と立場が逆転するかも知れない,なんてことは考えても見なかった。あくまで人間は人間,と。

でも,こう,人が人としてあるためには人と接触して人のやり方(たぶん手の使い方とかから)を学ぶ必要がある,となると,もし人がいない(3歳以下の「動物」しかいない)状況になってしまったら,猿の惑星みたいなことがじゅうぶん起こる気がする。
最初に人になったヤツは(「ルーシー」?)偉い。偉すぎる。

エンジニアの約4割,SF好きの約9割が人工生命に興味があると思われ(あ,適当に言ってみました),ぜひ他の人の感想も聞いてみたいところ。
音の認識とか絵の認識とかも書いてある。その分野の専門書はほとんど読んだことないけど,もしかしたら専門書とは違った知見が得られるかも知れないので,その辺を専門にしてる人にも読んでもらいたいなぁと思った。

あと,直接は関係ないけど,ちょっとググってて,このページの一番下のエントリがめちゃくちゃ気になった。ついこないだじゃん。